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2011年04月14日

石垣の土とともに

 季節は「うるずん」。
今時分が1年で一番いいと言う島の人も多い。
沖縄本島では「うりずん」だが、八重山では「うるずん」。
潤い初め…が語源のようなのだが、冬が終わり大地に潤いが増してくる時期のことだという。
確かに去年夏から住み始めた僕は、石垣でもこんなに爽やかで過ごしやすい日があるのだなぁと驚きとヨロコビを感じている。

この4月から、沖縄県農業研究センターという所で働きだした。
週3日、半年間の臨時職員という形で採用されたのだ。
農業経験は一切無かったが、石垣へ移住してから、こちらの花や植物への興味は膨らんだ。
そして、環境省のパークボランティアで活動していることを面接時にアピールしたのが良かったのか、翌日には面接担当者から「採用したい」と電話が入った。
嬉しかった。
50も過ぎて、面接を受けて…自分でも不思議な人生なのだなぁという思いと、採用を決めて頂いた方々には感謝の気持ちだ。

農業研究センターには、作物研究室と園芸研究室がある。
水稲やサトウキビ、イモなどを肥料や品種別に育成調査、収穫する作物研究室。
マンゴーやパインアップルなどの熱帯果樹は、園芸研究室の仕事だ。
今回、新たに採用された者は二名。
僕は作物研究室に配属された。
研究室と言っても、農業試験官のメニューに従って、赤土に塗れて農作業するだけなんだけど。
でも、これが実に気持ちいい。
作物を1から育てるという実感がある。
全てが初めての経験だから、楽しく勉強しながら働いてるようなものなのだ。


作物研究室と園芸研究室は、平屋の二軒長屋のようになっていて、中央部分の共用トイレと休憩室とで振り分かれる。
先日も園芸研究室の前を通りかかると、収穫したばかりのパインアップルを「食って行け」と呼び止められた。一足先に味わう夏の味覚。
作業机の上で無造作に切り分けられたパインアップルは、果汁いっぱい!糖度も上等サァ!なのであった。

僕のいる作物研究室には、4名の常勤職員と僕のような非常勤職員4名が作業している。うち一人は女性だ。紅一点のヨシミは、作物班リーダーのアトさんに言わせると「ハァ、スピーカーが横にいるみたいにうるさいさァ」だ。
事実、そうなのだが、この男たちの職場ではこの明るさと強さは欠かせない。
それに一番標準語に近い言葉で話してくれるのも彼女だ。
この研究室では、誰もが純度100%の八重山グチで会話するから、話の9割がたはチンプンカンプンなのだ。なんとか単語と表情を読み取って、つられて笑ってしまうのだが、こんな時にも通訳してくれるのがヨシミで、その都度またその場がドカンと沸くのであった。リーダーでムードメーカーのアトさんは、なんと僕と同い年だった。どう見ても島のハルサー(畑人)のニイニイ(お兄さん)なんだけど。

皆んな屈託なく笑い、大らかでよく働く。
朝8時半から夕方5時15分まで。確かに公務員ではあるのだけれど、太陽に合わせ、作物に合わせるここでの時間は、今までの自分にはなかったものだ。
田イモの苗を植え、稲の種籾を直播きした。
知らない世界を自分の体で知る。刺激的な日々が始まったような気がする。


去年の夏は、カエル調査であんなにも苦しめられた赤土だが、
今はこうして石垣の土をいじりながら暮している。
バンナ公園北側の試験圃場からは、今日も於茂登岳の山頂がよく見える。
蒼い空、緑の山々。そして、畑の赤土。
カメラのファインダーは、すっかり覗かなくなってしまったけど、
心の中のアングルファインダーでは、いつでもイイ画を捉えているのだ。
植え付けた作物も3ヶ月も経てば、実になり収穫されるだろう。
その頃の僕は、少しはハルサーのニイニイらしく見えてるかも知れない。



石垣の土とともに



Posted by ほんかー at 22:58│Comments(0)
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