プロフィール
ほんかー
ほんかー
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 5人
アクセスカウンタ
QRコード
QRCODE

2010年12月09日

看板掃除始めました

 11月に入ってずっと天気が悪かったが、この日は違った。
今年の夏、環境省のPV(パークボランティア)に初めて登録し、米原海岸の海中生物観察会、西表島でのサシバと森の観察会に続いて、3度目となる活動が「ヤマネコ注意標識おそうじ隊」だ。
良く晴れた朝になってくれた。もちろん、雨具のポンチョだけはデイパックに押し込んだ。

朝、8時の高速船で西表島・大原へ。
石垣PVからは4名、波照間PV1名が石垣から出発した。
大原港では西表自然保護官事務所のスタッフがレンタカーで出迎えてくれていた。港から清掃活動のスタート地点である大見謝ロードパークへ向かう車中、パークレンジャーから「安全運転宣言カード」の話を聞かせてもらった。

看板掃除始めました

この11月から始まったイリオモテヤマネコ交通事故防止キャンペーンのひとつで、島内のレンタカー会社の協力を得て、利用者に渡されるカードのことだそうだ。「私、○○は、人にも動物にも優しく安全な運転で西表島を走行することを宣言します。」という用紙にサインすれば、イリオモテヤマネコの写真をデザインした免許証サイズのカードがその場で貰えるというもの。レンタカー利用の観光客には「ここでしか手に入らない」いい記念品になるのではないだろうか。そして、宣言したレンタカーの車両には、大きく目立つマグネット式のステッカーが前後に張られる。
どこから見ても、「私は宣言しましたよ」という具合だ。
看板掃除始めました


これはヤマネコへの理解を深めるいい試みだと思う。
今はラミネート加工だけのカードだけど、定着すればプラスティックカードにして、旅の思い出とともに大事に持っていただきたいと話していた。

大見謝ロードパークでは、西表PVと一般参加者、それに自然保護官事務所のスタッフが既に集まっていて、今回の「おそうじ隊」総勢12名がここに揃った。天候にも恵まれ、これはもう「おそうじ」日和だ。
なぜこの時期に看板掃除なのか?
冬はイリオモテヤマネコの恋の季節だという。夏に生まれた仔猫たちも親離れして自立する頃でもあると。
つまり、これから行動が活発になり、道路への出現頻度が高くなるこの時期だからこそ、注意を呼びかけたい。年に1回の清掃活動だが、道路際での清掃作業の様子をドライバーが見て通ってくれるだけで効果はある筈だと自然保護官スタッフは語っていた。
注意標識の清掃範囲は、大見謝ロードパークを起点に西部(白浜)から東部(古見)までを3班に分かれて作業する。
参加者には、軍手と目立つ蛍光反射ベストが手渡された。
今回は清掃だけではなく、3頭のイリオモテヤマネコに取り付けられた発信器で、その位置を探るテレメトリー調査も体験できることになっている。
小夏日和に恵まれて、今日はいい汗をかこう。


おそうじキットを積み込んだ3台の車に、班ごとに分乗すると9月に起こったというユツンの事故現場へ全員で向かった。
看板掃除始めました

看板掃除始めました

ユツン橋を渡って県道が大きくカーブする辺り。道路脇には、涸れない水場があって、カニやカエルが多く集まるのだろう。
イリオモテヤマネコにとっては絶好の餌場だ。夜、カニを追いかけていたのだろうか。それとも道路に潰れたカエルを獲りにでも行くところだったのか。事故はここで起きてしまった。
これまでにも目撃情報が多数寄せられていたエリアだった。

この辺りの道路の側溝は、生物が横断できるようU字溝にはせず、底の浅いV字溝が施されている。幾つかのテリトリーが重なる地域だけに、交通事故防止対策が練られ、ハブ除けネットで水場を中心とする一帯を張り巡らせてあった。
ネットは道路に飛び出さないように、V字側溝と茂みの境目に設置されたが、あくまでも試験的であり、模索中だという。ネットがあることで却って悪影響が出た場合にはすぐに撤去すると話していた。

そう、彼らの生活圏の中に道路が走ってることに変わりはないのだ。さっきまでは、単に標識の清掃活動だと思っていたのが、ヤマネコの生態や事故の現場を知ることで、だんだん関心が高まってきた。これ以上、事故現場を増やしてはいけないと思うのだった。

看板掃除始めました

看板掃除始めました

 注意標識には幾つか種類があって、その設置場所や高さによっては雑草や木の枝が標識を邪魔している所があった。支柱のそばでは気が付かなかったけど、上り勾配やカーブの出口付近など、ドライバー目線になってみないと実際わからないものだ。伸び過ぎた雑草や木の枝は、鎌や高枝ノコギリなどを使って刈り払う。標識の表面は、ポリタンクに入れてある薄めた洗剤で雑巾がけだ。
手が届かない高さのときは、高枝ノコギリのポールの先に雑巾を巻き付けた。まだまだ改善の余地はあるな〜とも思ったが、この不自由さが可笑しくて絶えず和気あいあいとした雰囲気は、そのまま「おそうじ楽しみ隊」でもあったのだ。

道路には、車道と歩道が縁石で仕切られてあるような所がある。こういう所に背の高い雑草がびっしりと生えていた。この茂みの陰にヤマネコが潜んでたとしたら、ドライバーには到底見えないだろう。飛び出したヤマネコが車のライトに眩惑され、道路の真ん中で動けなくなってしまったら・・・たとえ40kmのスピードであったとしても、これは避けられないだろうと思う。
今回は参加人数が少なくて標識清掃しかできなかったけど、こういった草むしりからヤマネコたちを守る手立てはあるのではないか、そう思えてならないのだ。
島の曲がりくねった道をわざわざ直線にする工事も結構だけど、道路の保全は一体誰がやるのだろうと思ってしまう。


看板掃除始めました

標識には、移動式注意標識というものもある。いわゆる立看板で、目撃された地点に直ぐに移動できるといったものだ。
ヤマネコ緊急ダイヤルに目撃情報が入ると最寄りの地点の移動式注意標識をすぐさまその場に移動させるわけだ。標識の上部には畜光式の点滅ライトが取付けてあり、夜間にはよく目立つ。標識によっては、2箇から3箇取付けてあるが、これを一つ一つ点検して取り替えていく。
この頃になると、拭き掃除、刈り払い、点滅ライトの交換など全員で手際よくやれるようになってきていた。時間を見計らって、お茶にしたり、小休止を入れるなど自然保護官スタッフの気遣いがうれしい。久しぶりの太陽の下、首に巻いたタオルで汗を拭い、暫し談笑を楽しむ。テルモスに入れてきたコーヒーが美味い。


看板掃除始めました

高那の辺り。ここをテリトリーとするイリオモテヤマネコ3頭には、発信器が付けてあって、テレメトリー調査を体験することができた。アンテナを頭の上に持って、探るようにして道路沿いをゆっくり歩いた。参加者が代わるがわるやってみるのだが、昼間のせいか、ヤマネコからの発信音は残念ながらキャッチできなかった。

テレメトリー調査の次にアンダーパスの見学に向かった。
看板掃除始めました

道路の下を動物が行き来できるように作られた専用トンネルだ。
島内104ヶ所に設置されている。なかにはセンサーで感知するカメラがトンネル内にセットされている所もある。人間の匂いが出入り口付近に残ってしまうと、テリトリーを放棄してしまうこともあると聞き、注意しながら遠巻きに見学した。
本日の清掃作業はここでタイムアップ。大見謝ロードパークに戻って、昼食だ。


 展望台では、先に作業を終えた班がいて、遅れて戻って来た班も急いで思い思いお弁当を広げた。外で食べる賑やかなお昼ごはんは美味しいものだ。
西表PVで、今回が初めての参加だという女性は、「今までヤマネコがいるのが当たり前だと思っていたし、気にしない生活だった。だけど、この活動で意識が変わった」と話していた。夏のシーズンはスノーケルガイドで忙しい彼女だが、夏が終わって、ボランティアで何か役立つことがあればと参加したそうだ。「海での活動はお手のものだけど、陸での活動はちょっと苦手」と笑った。でも、初参加の緊張もあったけど、PVの人と楽しく会話しながら作業できたことで、次の活動がある時は今回よりきっと行きやすくなったと顔を輝かせていた。


 今回の清掃活動を通じて、初めてイリオモテヤマネコの生態について少しは知ることができた。この島では、ヤマネコに天敵はいないということも。
西表島では子供たちの手作り看板が幾つか見ることができる。
「この先でヤマネコが死んだよ」
この看板を見た時は、さすがに息を呑んだ。
子供たちは大人に何かを訴えかけようとしているのだ。
ヤマネコの事故現場の目撃者が、子供たちであってはならない。
そして、人間がヤマネコの天敵になってはいけないのだ。

今年、ヤマネコの死亡事故件数がこの10月で過去最多件数に並んだそうだ。
人間がヤマネコを救うのではなく、人間からヤマネコを守る。
そう考えた方がいいみたいだ。


何もしない休日だったかも知れない。
だけど、PVという活動があって、動物や植物のことを知る(学ぶ)楽しさを覚えた。そして、様々な活動を通じて色んな人と出会えることも楽しみになってきたところだ。

 (11月下旬の書きかけで終っていた日記を加筆した)


この日、西表島の詰所に投宿。
値切ったレンタバイクで、海沿いの道で日没を迎えた。
残照の中、丸々太った月がすぐそばまでやって来ていた。
自然が織りなすダイナミズムに圧倒された。
向こうの街明りは、石垣島。
眼と鼻の先だが、ここはまるで違う。

看板掃除始めました









Posted by ほんかー at 03:10│Comments(11)
この記事へのコメント
いろんな看板があるんやね。特に「わしゃ、おかんむり」の看板は関西の臭いがしておもわず笑っちゃった。「人間がヤマネコを救うのではなく人間からヤマネコを守る!」っか~。石垣に移住しPV活動で学んだほんかーさんから、今までこういうことに無知、無関心だった私がいろいろ学ばせてもらってるなあ。やっぱり同級生の体験やメッセージの力ってすごいネ~。
Posted by kucco at 2010年12月09日 09:45
>kucco
最初は誰もが無関心なんだと思うし、僕もその部類でした。
そこに行って初めて知ること。
この感覚は大事に持っていたいなと。
大阪からの同級生のエールは、ええエネルギーになります!
これからも、ちょくちょく覗きに来てね〜♪
Posted by ほんかーほんかー at 2010年12月11日 00:35
メチャクチャご無沙汰しています。最後に逢ったのが、もう30年以上前ですよね。
元気そうでなによりです。嬉しいなぁ。

オタニでした。僕もしっかり生きてるでぇー。
暇な時にでも連絡下さい。
Posted by 谷村マサヒロ at 2010年12月13日 04:00
>オタニ
ウレシイね♪
こんな感じでやってます f^_^;)
またチョイチョイ覗きに来てな~♪
Posted by ほんかー at 2010年12月13日 15:34
なんか、生きてるなぁ。
街では
いきながらえているというのが
実感や。
現実的経済的暮らしも
何とか成り立っているのなら、
街で暮らすことに未練など、
もうないだろう。
Posted by fatfat at 2010年12月13日 17:49
石垣の中でも街暮らしの方なのだが・・・
シンプルに考えるということを簡単に考えすぎたな、と今にして思う日々だ。
fat師よ、大阪で飲もう!
Posted by ほんかー at 2010年12月13日 19:50
ちょくちょく訪れてますが、コメはかなり久しぶり
気持ちが「かたっ」と音を立てた時、ここの写真みて 心 整理してます
形ある物の整理は得意なんだけどな
素敵な文章書くのね 新たな発見
生きてるって感じ!
また来ます
Posted by seamoon at 2010年12月14日 00:36
>seamoonさん
なにかの時、こうやって覗きに来てくれてありがとう。
慣れない南の島での冬暮らし…
これも経験。誰も訪れないこの季節の風景を見てやろうと思っています。
Posted by ほんかー at 2010年12月14日 15:33
ブログ 更新してね
何かあったのかと気になっちゃいます。
Posted by seamoon at 2011年02月12日 00:19
>seamoonさん
ご心配おかけしてます。
とりあえず元気ではあります。
ばたついてましたが、落ち着いたら更新しますね。
Posted by ほんかー at 2011年02月13日 18:10
生きてくれていてよかった。
Posted by seamoon at 2011年02月19日 01:07
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。